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「いいよね。悩んで、岐路に立って、苦しい時って最高だよね。」

眠れない毎日を過ごす俺に、先輩はそう言って笑った。

 

「いつまで自分に嘘ついてるのさ。周りにも嘘ついて。誰も幸せにしないよ。」

まったく正当な非難を、俺に浴びせたのであった。

 

その先輩の力で、俺は何枚かカードを引いて、手元のカードはすべて「自分」に関するものだった。

「自分」。

自分を、いつの間にか見失ってしまった。

 

 

今夜、俺はこの「Calender Hotel」という妙なホテルから、低い建物の街をながめている。

このホテルの運営会社は飲食店経営の会社で、スローガンは「Be I wanna be by eat!(『食』を通じて、なりたい自分になる。)」だそうだ。

 

社長のインタビュー。

佐藤氏:どんな人と働きたいかって?・・・『食』を通じて、なりたい自分になる。そんな思いを持っている人を仲間にしたい。自分の力で人生を切り開いて、リーダーとなって仲間を幸せにする。そんな人は独立して経営者になるべきだし、僕たちはそういう子達を応援したい。

 

先輩と話してから、さてさて俺は「自分」をどこで手放してしまったのだろうか、と考えていた。

いろんな「自分」を自分にかぶせてみて、しっくりくるものを探していた。

俺は、アーティストだ。

それが、一番ぴったりとフィットした。

 

自分に名前を付けてしまうことを、これまで細心の注意を払って回避してきていた。

たぶん、制約を与えたくなかったから。

それは何かを決断する勇気が無かったからでもあるし、すべてに誠実でありたいと願ったからでもあった。

自分に名前を付けて輪郭を与えることをしないのだから、自分に注目してメンテナンスしていないと、瓦解して雲散する。

もう、自分のことばかりに注目していられなくなったから、崩れそうになっていたんだ。

この期に及んでは仕方ない。

自分に輪郭を与える。

 

俺は、アーティストだ。

これが、しっくりくる。

自分の感性で判断する。

それを非難されることを、恐れない。

勉強や気配りをしないという意味ではない。

核としての自分の感性を手放さないし、信じるという意味だ。

 

また、今日が終わって、明日が来る。

 

 

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