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『American Idiot』の時代

Green Day の『American Idiot』が出た時、俺は16歳だった。

当時の俺にとって、Green Dayといえば『International Superhits!』というベストアルバムで、曲で言えばもちろん「Basket Case」だとか「Minority」だったわけだ。

「青春パンク」が華やかだった頃で、俺ももちろんモンゴル800やGoing Steadyなどを聞いていた。

青春パンクのインスピレーションのうち、海外からのものといえば、Blink 182やOffspring、Jimmy Eat Worldなどと並んで、もちろんGreen Dayだった。

なんか「もちろん」ばっかり言ってるけど、当時は本当に、俺も友達もみんな聞いていたのだ。

で、そんな中で出たのがこの『American Idiot』。

俺にとっては初めてリアルタイムで触れるGreen Dayの新作だった。

 

当時は貿易センタービルに飛行機が突っ込んだ同時多発テロから3年、どさくさで始まったイラク戦争が泥沼化する様相を見せ始める頃で、テロ直後にブッシュの支持率が空前の高水準を記録したあの高揚はもはや残っていなかった。

そもそもイラクとの開戦の大義として掲げていたのが「大量破壊兵器」だったにも関わらず、2004年10月には当のアメリカの調査団が「イラクに大量破壊兵器は存在しない」との最終報告を出した。

もはや「大義」はうやむやと言うほかない状態になったのだが、それでも戦争はなかなか終わらなかった。

そうなると「正義の戦争」というよりは単なる資源と覇権の争いでしかなく、少数の利権のために人々が死んでいく構図に皆が辟易とし始めた。

 

System of a Downは「B.Y.O.B.」(Bring Your Own Bomb=爆弾持参でよろしく)の中で、「なんでヤツらは貧乏人ばっかり送り込むんだ?」と毒づいた。

 

スウェーデンのThe Soundsというブロンディ直系のパンクバンドは、メジャーデビュー曲で「私たちはアメリカに住んでるわけではないので、申し訳なく思う必要はない」と歌った。

 

オアシスですら、2005年に発表したアルバムに『Don’t Believe the Truth』というタイトルを付けた。

ある程度の知性とセンスがあれば、そうでも言わなければとても楽しむ気分にはなれないような時代の雰囲気だった。

 

そんな時代にグリーンデイのこのアルバムは爆裂ヒットをかました。

「American Idiot」、「Holiday」、「Boulevard of Broken Dreams」と、アルバムの冒頭から次々とシングルカットされた曲は、すべてビッグヒットを記録していく。

そして父の死について書いたと言われる「Wake Me Up When September Ends」のビデオで、ついに戦場の場面を真正面から描いた。

まあ、ビデオの出来栄えはともかく、そういう時代だったのだ。

イラク戦争には本当に皆の嫌気がさしていた。

(にもかかわらず、泥沼化した戦争はそれから5年以上も続き、オバマの終結宣言が出されたのは2010年になる。)

 

『American Idiot』発売後の展開

で、そういう事とはそんなに関係なく、このアルバムは本当に聞いていて気持ちのいい、ポップなパンクソングがたくさん収められている。

Green Dayはこのアルバムで、ロックオペラという形式をThe WhoやPink FloysやQueenなどの歴史から引っ張ってきた。

そして2年後には同じロブ・カヴァロのプロデュースでMy Chemical Romanceの『The Black Parade』が制作されたが、これもロックオペラの快作である。

 

 

『American Idiot』ツアーの様子を捉えた『Bullet in a Bible』というライブアルバムも発表されたわけだが、これもライブの盛り上がりを上手くパッケージしていて聞き応えがある。

パンクなんてのはロックの歴史に中指を立てるために始まったようなものだが、この動画を見ればGreen Dayはロックンロールの正統なマナーに忠実に則っている事がわかる。

それが良いか悪いかはまったく別の話として、「Shout」というR&Bナンバーをカヴァーして皆で盛り上がるという古典的風景。

本番の展開を想定して、周到に用意され、練習され、準備された快楽。

 

俺は赤ん坊にロックを聞かせておく

久しぶりにこのアルバムを聞きながら、「気持ちいいなぁ」と赤ん坊を抱えて歩き回っていたわけだ。

Green Dayの音楽が発する「陽」のパワーには、何か人を元気づけるものがある。

何度か言ったように、今後10年以内に、ロックシーンはまた盛り上がりを見せるだろうから(俺はそれをグランジリバイバルだと予想しているわけだが)、赤ん坊にロックぐらい聞かせてやるのもまた教養のうちだ。

 

なぜロックが盛り上がるかという理由を説明しておくと以下のようになる。

今後は音楽をいくらでも自分達で録音して発表できる時代になる。

同時にネット上での知名度だけでなく、音楽の体験や、そもそも音楽を始める動機として、ライブの熱量は絶対に求められる。

その際に「バンド」という形式ほど仲間内の結束を強めて情熱を高め、友人達と盛り上がれる形式は他にない。

ただまあ、それが古典的なギターロックバンドの編成になるかどうかは別で、バンドのメンバー内にDJとダンサーなどを伴っている可能性はあるが。

その中でなぜ俺がグランジにベットするかというと、今のポップシーンの主流から一番ほど遠いのがグランジだからだ。

そもそもダンスだとかパーティだとかが嫌いなやつらの鬱憤を受け止めるなら、グランジのようにクールで反逆的なイメージをまとったジャンルは、この上なくフィットするだろう。

 

なんとなくスマパンを貼ってみるが、このはちきれそうな切なさと緊張感。

勃興してくる「メイカーズ」なティーンエイジャーたちが、このエモーションに目を付けたなら、自分たちでやってみたくなるに違いない。

 

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